咆哮
エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイヴ・スポットVOL.1+1
フリー・ジャズの人と紹介されることもあるのだけどあまり適切じゃないと思う。まああまりフリージャズは聴かないので偉そうなことは言えないけれどこの人の演奏はフリージャズではないと思う。それはセロニアス・モンクやチャールズ・ミンガスやデューク・エリントンがフリージャズでないのと同じだ。
確かにフレーズは調性が感じられないような前衛的なものだけれどフォーマットはビバップのそれだ。(まあ前衛的なよく解らない曲もあるけれど)
チコ・ハミルトンのアルバムで吹いている「in a sentimental mood」のメロディを聴くと不正確な音程を出しているけれどそれが故意的なものであることは聴けば誰でも判る。それは古典的なフォーマットの上で前衛的なフレーズを繰り出すことと軌を一にしているんだと思う。http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005HORT/httpdhate0cc2-22
このアルバムの裏ジャケに双頭リーダーのブッカー・リトルのインタビューが載っているけれど、そこで彼はあるコードの上で不協和音を吹く時、コードと無関係に吹いてるのではなく、そのコードの上でその音が鳴っていることをちゃんと意識して吹いていると言っている。(英語なので自信ない)
といってもフリージャズのムーブメントと全く関わりがないというつもりはない。むしろ大いに関係はあるだろう。
フリージャズと言ってもそれがジャンルとして形をなすにあたり、他のジャンルと同じくどうしても体系化し陳腐になっていくものだと思う。
私自身はフリージャズの試みはシュールレアリスムや“いわゆる”現代音楽のように失敗だと思っているが(意味がなかったというわけではない)それでもその初期衝動のようなものには人を熱く、感動させる力があると思う。
そのような変化の過程にある音楽というのは非常に面白い。完成されたものではないかもしれないがそこにしかない面白さがある。スウィングからビバップの過程を体現したチャーリー・クリスチャンと共通した面白さを感じる。
とまあ、そんなエリック・ドルフィーの最高傑作ライブアルバム。かっこいいなあ。この時の様子は分散して他にもアルバムになっているので是非どうぞ。