奇妙な果実

道を挟んだ両側にタケシと同じ年頃の男女の三十数体の死体が肩から上が見える状態で並んでいる。そのうち三分の一ほどの死体がぐっと上方にせり出し笑い始め、残りは手拍子を始めた。笑っていた死体が元の位置に戻るとタケシが他の死体から促され上方にせり出した。

少年が死体遺棄罪で逮捕された。死体は三十数体に及び、すべてを少年が殺したのかは不明。

タケシの家の近くの公園には大木が多く生えている。タケシはそのうちの一本を選び枝を引き抜き始めた。大変大きな木だが、タケシは暇を見つけてはそこに向かい終にはほとんどの枝を引き抜いたため木は禿げ上がってしまった。

その様子を影から見つめる少女がいた。少年は少女に気づいた。近所で見かけたことのあるかわいらしい少女だった。しかし少年は気づかない振りをし黙々と作業を続けた。少女も時間の許す限り少年の作業を見守っていた。

木が完全に禿げ上がる前に、少年は引き抜いた枝で木を整形しなおすことを思いついた。木は再び枝振りを整えていった。そこには奇妙な果実も下げられていったが、枝を再移植し始めたのとどちらが先だったかはわからない。

少年は作業に没頭する度を深めた。終に木は枝振りを元の状態よりも繁茂させ、果実は三十数個に及んだ。

少年が家に帰ると母親が姉に近所の公園で三十数体の遺体が発見されたというニュースについて話していた。少年はそっと家を離れたがどうしていいかは判らなかった。少女との繫がりだけが少年の支えだった。