[実話]10年前

大学四年のちょうど今頃、卒論の提出期限だった。「犯罪とファンタジー」とかそんな題だったと思う。


内容はというと東京拘置所に行って殺人犯(僕の場合は未遂犯)に面接し、心理テストをする。それをまあ大抵は先生が鑑定して鑑定書を作るわけ(実際、裁判とかに使われるんだと思う)。


大抵って書いたのは中には可哀想なやつもいて、そもそも殺人犯の鑑定の依頼の数が限られてるもんだから順番待ちになるわけ。だから一番遅いやつは提出期限の一月前とかにテストが終ったりするから先生が鑑定してる時間がなかったりして自分でやらざるを得ない(もちろんこれは裁判等で使われることはないでしょう)。ただでさえ期限が迫っているのに踏んだり蹴ったり。


まあ実際そんな憂き目にあったのは絶男ってあだ名のいかにもダメそうなナイスガイだけだったんだけど、彼、心理テストに行って筆記用具を忘れ、拘置所の人に借りて失笑を買ったりしてた。

ちなみに僕もストップウォッチを忘れていったことがあるんだけど腕時計もしてなくて、一生懸命頭の中で「1、2、3・・・」って数えて乗り切りました。


僕の担当の先生は本当にやる気がないというか生徒に何も期待してないようなタイプの人で多分、卒論に目も通してないと思う。なので卒論製作自体も簡単で、テストを取った後することは、まず先生の書いた鑑定書をまるまる写してだいたい半分。後は考察なんだけど参考資料として挙げてくれた本を適当に抜粋すれば済む。あと今後の課題とかはまあ適当に体裁つけて出来上がり。


ちなみに僕の順番は前半の方だったので時間的にはまあ余裕がありました。なのでとりあえず参考にする本から抜粋する部分を選んだ後はしばらくほっといたわけ。で、そのまま提出期限2週間前になりました。


そのころはパソコンは今ほど普及していなかったとはいえ、一応DOS(だっけ?)とかなんかやらされたし、流石にワープロは普及してたので手書きで書く人はまずいなかったんだけど、僕は手書きのつもりでいました。


そんで専用の原稿用紙みたいのを買いに行ったわけ。ところがそれが品切れで取り寄せに1週間かかると。流石に焦ったけれど一応ワープロはうちにあったからなんとかそれで頑張ろうと思い、書き始めました。


最初のうちは余裕こいてブラインドタッチとか試みてみてたんだけど数日してこのペースでは間に合わないことが発覚。仲良くしてもらってた先輩に代打ちを頼んで、せめて多少は早いかなと口述筆記。


もちろん終った後ちゃんと御礼しましたよ。当時は今より金持ちだったから。


僕らの年は口頭試問の替わりにポスター発表という形式が採られたんだけどその熱意のないの先生からの質問は「楽しかったですか?」だけ。